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お燗酒について

これから寒くなるにつれて、
いよいよ燗酒が本格的に美味しくなる季節がやってまいります。
ここで、燗酒について書かせていただきます。
少し長くなりますが、読んでいただけたら幸いです。

◎そもそも燗酒とは…

日本酒には、乳酸、コハク酸などの
「温めると美味しくなる」成分が豊富に含まれています。
加熱して温度を上げる事により味わいが一気に膨らみ、
冷酒の時に見られなかったポテンシャルが開花いたします。
これは、「米麹」つまり「麹菌」が特に重要な作用を果たしています。
大陸より発祥した東洋の醸造技術の特徴とも言えます。
しかし、僅かな温度帯の違いによる様々な味わいの変化があるのは
世界中の種類を見渡しても「日本酒」以外他にありません。
良質な原料と丁寧な酒造りにより非常に繊細な酒質だからこそ成せる

まさにオンリーワンの世界だと言えます。

「冷酒は好きだけど、燗酒はちょっとねぇ…」

「燗酒はキツイし、体に合わない」

という声も耳にする事があります。

確かに人それぞれ好みや体質はあるかもしれません。
しかし実際燗酒は身体に良く、優しく体内に溶け込んで
癒してくれる作用があります。

どの人にも、酒質や温度帯の違いにより好みにフィットする燗酒というのは
必ずあるはすです。

多くの方々に、燗酒に対する正しい見識を持っていただく事で
日本酒を楽しむ世界観をさらに広げてもらえれば幸いでございます。

◎どんなお酒が燗に適しているのか?

一口に燗酒と言っても、日本酒の酒質というのは様々であり、
どのお酒が適しているのかというのは
実際やってみないと分からない部分があります。
ただ、冷酒、燗酒という大まかなカテゴリで説明すると…

① 冷酒で美味しく感じるものとは

これには、リンゴ酸、酢酸などの 「冷やすと美味しく感じる」成分が
多く含まれている為であります。

例・カプロン酸エチルを多量に含む吟醸、大吟醸系によくみられる、
旨味やコクよりも「香り」が重視で、上品でしとやかな酒質のもの。

すっきり爽やかな酒質、所謂 「爽酒」とよばれるもの。

② 燗酒 (常温以上)で美味しく感じるものとは

これには冒頭の文に書いたように、乳酸、コハク酸、アミノ酸などの
「温めて美味しく感じる」成分が多量に含まれている為であります。

例・生モト、山廃系などのボディのしっかりしたタイプ。
米の旨味がしっかりと感じるふくよかなタイプ。
熟成酒等。

ただ、これらはあくまで大まかな参考レベルとして捉えていただければ、と思います。
前出の通り、どのお酒が燗に適しているかどうかは
やってみないとわからない部分もあります。
酒質にこだわらず、何でも試してみるのも一つの手です。
意外な発見があるかもしれません。

また、冷酒 (もしくは常温)の状態で味の濃度に関係なく
硬く引き締まった味わいのものでも、芯の強さや、
米の旨味のポテンシャルが何となくでも感じられるものなどは
迷わず燗にしてみるのもいいです。

飲んでみて、何か感ずるものがあれば迷わずお燗で!

◎温度帯について

では実際その温度帯についてどのようなものがあるのか
具体的に説明いたします。

① 日向澗
主に30℃前後のもの。ほぼ常温状態といっていいでしよう。

② 人肌燗
30℃以上~40℃ぐらいのもの。
特に繊細な酒質のもの。香りがあり、香味のバランスを活かしたいものなどには
お勧めの温度帯とも言えます。
酒質にもよりますが、この温度帯は香味バランスが整うので、
温度帯にどうしても困ったらまずはこの温度帯で試してみるのが
いいかもしれません。

③ ぬる燗
40℃~45℃
燗酒の中では最もスタンダード(?)とも言える温度帯。
この温度帯から米の旨味が一気にヒートアップしてきます。
味わいの濃度に変わらず冷酒の状態でも米の旨味、膨らみが
ちゃんと感じられるものには最適な温度帯とも言えます。

④ 上燗
45℃~50℃
③に適する酒質よりももう少し旨味のしっかりしたものには
お勧めと言えるでしょう。
但しこの温度帯から温度の上昇が早くなるので
上げすぎたくない場合は注意してください。
また、本醸造、普通酒などのアル添比率が高いものなどは
この温度帯よりアル臭っぽさが消えてくるので、本醸造、普通酒などで
やや旨味のあるもので味わいのバランスを整えたいものなどにもお勧めです。

⑤ 熱燗
50℃~55℃
特に味わいのふくよかなもの、旨味のしっかりしたもの、アル添酒でも
旨味豊かなものなどには最適といえるでしょう。
高い温度帯になってくると、上げたてはどうしても酒が荒れている状態なので
この温度帯より所謂 「燗ざまし」効果が活きてきます。
酒質のしっかりしたものなどは上げた状態から徐々に温度が下がって
落ち着いてくると味わいが整い、より膨らみが増しマイルドな味わいに変化します。

⑥ 飛び切り燗
55℃~60℃
生モト・山廃系などの濃醇タイプなお酒、古酒などの熟成酒などには
お勧めの温度帯と言えるでしょう。

⑦ 煮切り燗
60℃以上~
⑥に適するお酒に、さらに酸のしっかりしたもの、ボディがガッチリ
引き締まったゴツイものなどにはこの温度帯がいいかもしれません。
但しべストな飲み頃温度帯は5O℃以下に冷めてきたものの方が
美味しいものがほとんどです。

◎燗酒のつけ方・その種類などについて

通常は、熱いお湯の中に燗につける酒を投入し、
燗付けしていくものですが、
瓶酒で最も美味しいつけ方と言われているのが、
水を張ったお燗機、もしくは鍋にて、お湯ではなく水の状態から
燗につける酒を先に投入し、少しずつ上げていく方法です。
しかし、飲食店様などの業務用となると時間的にそんな余裕もありませんので
これはあくまで豆知識として捉えておいてください。

では一般的にはお湯はどの温度が最適なのか・・・

お燗機・鍋などでも、湯の温度は大体70℃~80℃前後ぐらいが一番ベストだと言えます。
熱すぎてもかえって駄目です。
急激に上げてしまうとかえって酒質が壊れてしまいます。
慌てず徐々に上げていく事が上手い燗付けのコツと言えるでしょう。

陶器などももちろん良いですが、やはりちろり系は
最もべストアイテムです。
初心者でも失敗が少なく、付けやすいです。

燗酒は付けたらそのままで出すのが一般的ですが、
アレンジを加える事でより美味しく楽しめます。
そこで燗の付け方についていくつかの方法を
説明いたします。

① 燗冷まし
これは一般的な手法です。
熱燗以上の高温なものなどは、そのまま何もせずに
自然に温度が下がるのを待つだけです。

② 戻し燗
ある程度温度を上げたもの (ぬる燗以上)に
冷酒をほんの少し加える手法。
爽酒だけど膨らみのある酒、円やかでマイルドな旨味がありながらも
クセのない、キレのいいお酒などには良く上がります。
意外と化けるものは化けます。

③ 急冷燗
熱燗、飛び切り燗、煮切り燗などに付けたものに
氷を入れた容器にちろりや徳利ごとつけて一気に冷ます手法。
旨味しっかりの濃醇系、古酒系などに使われます。
ふっくらまろやか、余韻もあるまったりとした味わいが楽しめます。

④ お燗タージュ
所謂ワインの 「デキャンタージュ」の手法。
業界ではお燗タージュなどと呼ばれております。
③に合うようなお酒に、さらに酸のしっかりしたもの、
燗に付けてもまだまだ硬いような酒質などには、
この手法で、空気に触れさせ 「酸化」させる事で③の様な
効果が得られます。
よほどゴツく頑固な酒でない限りはお燗タージュは1回で大丈夫です。
空気に触れさせる距離を長くして、ゆっくりやるのがコツです。

⑤ 割り水燗
旨味が特にふくよかで多少重みを感じてしまうもの、
アルコール度数の高めのものなどは、
ほんの少しの水を加える事で柔らかさやマイルドさを引き出します。
後キレがよく、濃い酒も意外とスッと綺麗に飲みやすくなるのが特徴。

⑥ 割り氷澗
主に熱燗以上につけたものに氷を一つ浮かべる手法です。
⑤と同じような効果がありますが、決定的な違いは⑤よりもさらに
急冷効果があるという事です。
⑤よりもさらに骨太な酒質にいいかもしれません。

さて燗酒を楽しむうえにおいてポイントなのが酒器です。
お燗といえばやはりお猪口ですが、
お猪口でも、ある程度香りも活きた燗酒なら口が内側に閉じたもの、
ふくよかなタイプの燗酒なら口が外側に開いたものが適していると言えます。

ただ、燗酒で最も適している酒器と言えば、やはり平盃タイプのものでしょう。
燗酒ならでほの豊かな旨味が口中に余す所なく広がる効果があるからです。

お燗に付ける事で様々な味わいの変化により合わせる料理も変わってくるのも
燗酒の魅力の一つです。
冷酒では見えなかった味わいにより、冷酒では合わなかった料理が合う事も。

例として一つ面白いのが、刺身系の生物とお燗酒です。
酸がありながらもマイルドで柔らかな燗酒などは刺身に良く合います。
刺身のひんやりとした感触に燗酒で口中をふんわり暖める。
逆に燗酒で暖まった口中に刺身でひんやりとさせる。
冷酒では味わえない美味さがあります。

以上になりますが、参考にしていただけたら幸いです。
色々燗付けしていく事によって
より日本酒の奥深さも感じてくるかもしれません。
是非色々試してみてください!



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